〜雁坂峠越え秩父往還141km走 完走記〜
田中 貴浩
@.何故申し込んだか?
奥武蔵ウルトラマラソンの参加案内に、『雁坂峠越え秩父往還141km走』の案内が同封されていた。117kmを経験した私としては、141kmという距離・途中の峠越えというコースに非常に興味を持ったが、参加募集人員が100人と少ないこと(レースなのに廻りにランナーが見えなくなって孤立しちゃいそう)・ウルトラマラソンの一番の楽しみであるエイドステーションがこの距離としては8ヶ所しかないこと(荷物が負担になりそう&エイドでの触れ合いが少なそう)・制限時間24時間というのは未経験(夜間走行の練習も未経験)などの理由により、富士五湖のように一人での参加は諦めた。一応何人かに声をかけてみたが、賛同者は見つからず、今年の参加は諦めていた。
そこで、9月17日にH比谷クラブの仲間にトライアスロンを誘われたので、せっかくCんたら〜ずの元強化主任さんに中古ながらトライアスロン用のバイクを譲って頂いたこともあり、こちらでトライアスロンのリベンジを考えていた。ところが、申し込み締め切り直前になって、M走会JAPANのフーさんから、雁坂峠越えを申し込んだので、一緒にどうかと誘われた。気持ちはトライアスロンのリベンジに向かっていたので多少は迷ったが、申し込むことにした。トライアスロンも、終わった瞬間はともかく、今の気持ちとしてはたった1度でやめる気はないが、私にとっては雁坂峠超えの方が面白そうに思えた。
日程的には、9月17日にトライアスロンに参加して18日・19日に雁坂峠越えに参加する、ということも可能ではあったが、これではさすがに身体が壊れるか途中リタイアになるだろうと思い、トライアスロンのリベンジは来年に持ち越すことにした。
自分は、やはりトライアスリートではなくランナーなんだな、と再認識できた瞬間だった。
A.レースに向けての準備〜スタートまで
以前にも書いた事があるが、基本的には初めて走るコースもウルトラマラソンの楽しみの一つ。しかし、今回は初めての夜間走行があるので、道に迷ったら大変だと思い、夜間に走ることになる西武秩父〜川越のゴール地点までの約50kmを試走しようとした。
申し込み完了してから、本番までは約1ヶ月。横浜月例・バス旅行・友人の結婚式・既に申し込んでいた日本山岳耐久レース(長谷川恒夫カップ=通称ハセツネ)の試走などの予定があり、試走をできるのは9月3日しかなかった。翌日は皇居での駅伝があったので(私は友人の結婚式に出席する為に不参加)参加を呼びかけ辛く、M走会JAPANの仲間を誘ってみたが賛同者が現れなかったので、一人でのんびり走ろうかと思っていたら、前日になって本番は不参加のしばやんさん・菊ちゃんさんが参加表明をしてくれた。このおかげで楽しく走れる・・・と思ったのだが、単調なコースに加え、あまりの暑さにバテバテで、東吾野で終了となってしまい、本番に向けて大きな不安を残すことになった。短い区間ではあるが、街灯があって夜間でも道路は明るそうなこと、自動販売機・コンビニの位置が、ある程度分かったことは収穫だったが。
本番1週間前に、M走会JAPANの仲間とハセツネの試走をした時に、夜間走行のアドバイスをしてもらった。ハセツネでは義務付けられているヘッドランプは、雁坂峠越えでは特に規定はないが、自己管理として持っていた方がいいとの事。ハセツネと違って街灯はあるが、対向車から自分を見つけてもらう為だ。また、後ろにつける点滅灯もあった方がいいとの事。これも後方からくる自動車から自分の身を守る為。
本番二日前に、Bックカメラで点滅灯とヘッドランプを買おうとしたが、ヘッドランプは売っていなかったので、手で持っても負担にならなさそうな懐中電灯で済ませることにした。食料は、5個入りの大福・一口サイズの5個入りの菓子パンを3袋持つ事にした。
前日、フーさんと新宿で待ち合わせして、普通列車で甲府に向かった。高尾で乗り換えの際に缶ビールを1本ずつ買い、お互いの健闘を願って乾杯!二人とも500ml1本では少なく、停車時間の長かった大月ではもう1本ずつ買うことになった・・・。
ホテルに着くと、お腹が減っていたので甲府の町をブラブラ歩いてみたが、大した店がなく、Mクドナルドのハンバーガーで我慢した。その後、フーさんと待ち合わせて受付を済ませたが、競技説明までは時間があったので、前夜祭(?)のお店の場所の確認をしておいた。ハンバーガーではお腹が満たされなかったので、コンビニで菓子パンを買って受付会場(競技説明会場)で食べながら待つことにした。
受付会場は、スタッフの予想以上に人が集まったようで、立ち見の方も多かった。エイドの説明や、コース上の迷いそうなポイントの説明、スタッフの紹介などがあり、最後は全員で記念撮影をして終了。
受付後は、フーさんとフーさんの知り合いのM利さん(大阪在住の50歳台の女性ランナー。関西ではかなりの有名人らしい。)と、その知り合いのT辺さん(このレース唯一の第1回からの連続完走者。海外での実績も多い。)と前夜祭をした。お二方とも、私のようなウルトラ初心者とは別世界の方々だった。
ホテルに戻ってから、レースの準備をして、風呂に入り、最後に缶ビール(350ml)を1本飲んでから就寝。24時間走る(起きている)ことを考えると何時に起きればいいのか分からなかったが、スタート1時間半前の3時30分に目覚ましをセットすることにした。
スタート当日3時30分、無事に目覚めることはできたが、夕方から前夜祭にかけて食べ過ぎたせいか、全く食欲がない。それでも、食べないと身体がもたないと思い、無理やりオニギリを3個お腹につめこんだ。
装備を再確認してから部屋を出ると、ちょうどフーさんも部屋から出てきたところだった。一緒にチェックアウトをして、会場へ向かった。最終チェックを受けて、ゴールに送る荷物を預け、トイレに行った後にストレッチをしてスタートを待つ。アップしているランナーは見当たらなかった。それから、ランシャツ・ランパンスタイルのランナーも見当たらない。やはり、普通(100km前後)のウルトラマラソンとは違うのか?(私は、上はオクトーバーランのTシャツ、下は短パン、背中のリュックには菓子パンの他、500mlのペットボトル2本という練習のような格好)
最後の競技説明の後、全員で記念撮影をしてからスタート地点に行くが、誰も先頭に並ぼうとしない。和やかな雰囲気の中、いよいよスタート!
B.スタート〜CP1(第1チェックポイント)<道の駅「花かげの郷まきおか」> 25.5km
スタート後、1kmも走らないうちに早くも大勢の集団から置いていかれた。距離表示が無いので正確なペースは分からないが、私も7分30秒から8分00秒程度の、時間内完走には理想的なペースだと思うのだが・・・。後ろには、ランナーが10人程度しか見あたらかったが、まだ序盤。自分のペースを信じて進む事にした。
3kmぐらいから、上り坂が始まった。舗装道で標高は500m弱なのだが、荷物を背負っているので結構きつかった。それでも奥武蔵の練習会を思い出し、まだまだ先は長いのでマイペースで走った。一緒に走っていたランナーが、富士山が見えていると教えてくれた。レースを楽しもうと思っていたのだが、序盤でいきなり置いていかれたこと・いきなりきつい坂にかかったことで、景色を楽しむことを忘れていたことに気付かせてもらった。雲がかかっていたが、富士山の姿を見ると、今年のシーズンオフの始まりである、富士五湖から富士山を見たチャレンジ富士五湖117km、とにかく頂上を目指して何とか登り切った富士登山競走を思い出した。あの苦しかったレースを乗り切れたのだから、今回も自分を信じて頑張ろう、という気持ちになれた。もちろん、レースを楽しむことを忘れないように、とも思い直すことができた。
国道140号線に出ると、しばらくは一本道。気持ちが落ち着いてくると、トイレに行きたくなってきたが、そういえば他のランナーは、トイレはどうしているのだろう?奥武蔵の教訓(?)で、ティッシュは持っていたがトイレが無ければ意味が無い!エイドはまだまだ先、公衆便所はありそうもないので、結局コンビニのトイレを借りて用を済ませた・・・。スッキリしてコースに戻ると、かなりのランナーに抜かれたようだったが、特に焦りもなく再びマイペースで走り続けた。
国道沿いには『巨峰の丘マラソン』の看板があった。そういえば、何人かこのレースを走るんだろうな、と思いながら足を進めて行った。3時間ぐらい経過すると、さすがにお腹が減ってきたし背中の荷物も重かったので、菓子パンを食べることにした。しかし、これは失敗だった。すぐにCP1(第1チャックポイント=エイドステーション)に到着した。コーラをもらってから、念のために便所に行き、再び戻ってもう1度コーラと、塩分補給に梅干をもらって再スタート!
C.CP1〜CP2<雁坂峠登山口> 14.5km
CP1を過ぎると、ダラダラした上りが続く。もう大分暑くなってきての上り坂で、バテているのか体力温存なのか、歩いているランナーが多い。私はいつものように、エイドやストレッチ以外では、スピードはともかく歩かずに進み続ける。もっとも今回は、登山道は歩くことになるのだろうが・・・。
暑さのせいか、喉が渇くのが早い。CP1でコーラを飲んだばかりだったが、自動販売機にコーラを見つけると、欲しくなってたまらず飲んだ。ペットボトルだから飲み切る必要はないが、走った後にまたキャップを開けると炭酸がすぐに抜けてしまうので、半分は飲んでおかないともったいない・・・などと考えながらゆっくり飲んでいると、先程抜いたランナーに抜き返されていった・・・。
再び走り始め、先程抜き返されたランナー達を再び抜き返すと、前方にはランナーの姿が見えなくなった。国道を一直線なので道に迷う心配はないのだが、何だか急に心細くなってくる。気を紛らすために、ちょうどお腹も減ってきていたし、持ってきていた大福を食べようとしたが、アンコが飛び出していた・・・。味に変わりはないが、手がべとつくと面倒になりそうだったので、何とかまともそうな形のものを2個だけを食べておいた。
広瀬湖にさしかかると、ようやく前方にランナーが見えてきた。やはりランナーが見えてくるとホッとする。ホッとしたところで自動販売機が目に入ると、先程買ったコーラはまだ残っていたが、もう1本買っておくことにした。ここでは残っていた方を飲み切り、今買った方の半分を空いたペットボトルに入れておくことにした。飲み終わってしばらく走っていくと、スタッフが手を振って呼びかけてくれた。ようやくCP2に到着した。ここまではスタートから40km。予定では、1kmを7分ペースで走り、ロスタイムを含めて5時間で走れるかな?うまくいけば4時間半ぐらいで行ければいいな、などと考えていたが、5時間22分かかっていた。まあ、ゆっくり走った分、体力を温存できたと思えば大したロスではないが。
ウルトラマラソンで一番のお楽しみ!まずはコーラをもらい、続いてオレンジジュースを飲んで一息ついてから、ここではソバを頂いた。オニギリもあったがここでは食べる気がせず、もう1杯ソバを頂き、塩分補給に梅干も頂いて、最後にもう1杯オレンジジュースを飲んで、再スタート!いよいよこのレース一番の山場、雁坂峠越えだ!
D.CP2〜CP3<雁坂峠小屋> 7.0km(林道2km+登山道5km)
CP2を後にすると、すぐに山道を登ることになった。少し登ると舗装道になった。矢印に沿って来たつもりだったが、不安になって案内を見ると、『登山道を少し登ると林道に出る』と書いてある。私は『林道』というものを知らなかったので、勝手に『登り易い登山道』と解釈していたので、よけいに不安になってしまった。誰か他にランナーがいないか廻りを見渡してみても、前方にも後方にも見当たらない。まあ大丈夫だろう、と気持ちを落ち着かせながら進むことにした。
結構きつい上り坂だが、まだここは舗装道。『まだ歩く訳にはいかない!』と自分を励まして超スローペースながらも走りつづけたが、20分ぐらい経っても登山道が見えてこないので、またもや不安になってきた。『やっぱり道を間違えていたのか?』と考えようとした時に、初めて下山してくる登山客とすれ違ってホッと一息。どうやら間違っていなかったようだ。気を取り直して走っていくと、ようやく前方のランナーが見えてきた。並んで少し話して抜いていくと、ようやく登山道が見えてきた。結局、林道を通過するのに30分近くかかった。(本当に2kmだったのか?)
さすがに登山道は走れなくなり、しばらくは本当の登山。平坦なところを走ろうとしたが、すぐ脇が崖になっているので、怖くてすぐに歩きに戻した。しばらく平坦だったと思ったら、今度はコースが下り始めた。また不安になったが、先程追い抜いたランナーも後ろから来ているのをみて、安心して下れた。下ると、湧き水が流れていた。暑かったので、手を洗ってみると水が冷たくて気持ちよく、顔も洗うことにした。飲んでもみたかったが、さすがに怖くてやめておいた。
再び登って、また下ると、今度は大きな川(?)のようになっている湧き水(?)があった。基本的には、木の枝にかかっているリボンが目印になっているのだが、リボンが見当たらないので真っ直ぐに進んで行くと、道がなくなってしまった。よくよく廻りを見ると、河原(?)の石にマークがしてあり、この川を渡った反対側がコースになっているようだ。
コースに戻ると、また登山道が始まり、団体の登山客とすれ違った。団体客の先頭の方が道を空けてくれたので、お礼を言ってすれ違うと、「がんばってね!」と応援してくれた上、「ランナーが通りまーす」と後ろの方々に伝えてくれて、皆さんが脇に避けてくれた。お礼を言いながらすれ違うと、皆さんから応援を受け、とても気持ちよかった。
しばらく行くと、崖を流れ落ちてくる湧き水があり、頭から浴びたり、飲んだりしているランナーがいた。「おいしいですよ!」と薦められたが、まだペットボトルにも水は残っていたので、飲むのはためらい、頭から浴びるだけでやめておいた。この後ロープを使って少し登ると、ようやく本当の(?)登山道らしくなってきた。ところどころにあるリボンを目指して登っていく。リボンが見えなくなると、折り返し(ある程度右に登っていったら、次は左に登っていく、という感じ)ということも分かってきた。ふと気付くと、左足首が何だか痒い。立ち止まって左足首を見てみると、弱くなっていた靴下のゴムの中にアブが入っていた・・・。いったい、いつから入っていたのだろう?
また一つ、湧き水を越えると、展望が開けてきた。景色は最高!気を良くして進んで行くと、だんだんとお腹がへってきた。荷物を減らすためにも休憩して食料を食べたかったが、道は細くて休憩するスペースがない。この辺りでは、下山してくる登山客が多かったので、立ち止まって食べる訳にもいかず我慢することにした。さらに進んで行くと、ランナーが見えてきた。目標(?)が見えてくると自然とペースも速くなり、あっという間に追いついてしまった。このランナーは完走経験者だった(ゼッケンナンバーで分かる)ので、しばらくはこのまま後ろを着いて行こうかと思ったのだが、親切にも脇に避けてくれてしまった。仕方なく(?)追い抜くことにしたが、ちょっと後悔。ピッタリ追いつくんじゃなかった・・・。追い抜いたからには私が休むわけには行かなくなり、食事はまたもやおあずけ。いつになったら食べられるのだろう?
頂上が近付いて来ると、樹木が段々と減ってくる。改めて下の方を振り返ると、随分と登ってきたことを再認識できる。ようやく頂上に着くと、ベンチがあったので一休み。景色を楽しみながら、ようやく食事にありつけた。次のCP、雁坂小屋までは後少しのはずだったが、ひと時の休息を楽しむ事にした。小さい菓子パンを3つ食べたところで、ランナーが登ってきたので、雁坂小屋まではあとどれぐらいか聞いてみると、ここ(頂上)から5分ぐらいとの事。食べ過ぎたかな?と思いながらも、もう一つ菓子パンを食べてから下山道に入った。先程のランナーはもう見えなくなっていて、後続のランナーも来る気配はなかった。雁坂小屋が見えてくると、大会実行委員長やスタッフの方々が手を振って迎えてくれた。
E.CP3〜CP4<秩父市大滝川又「扇屋山荘」> 下山道10.0km
雁坂小屋に着いての大会実行委員長の第一声は、カップラーメンは、しょうゆ味とみそ味どちらにしますか?との質問。思わず「しょうゆを下さい!」と答えてしまった。他のスタッフからはオニギリは何味がいいですか?と言われ、「明太子!」と答えてしまった。さらに別のスタッフからは、おしるこもありますよ、と言われたがさすがに断った。頂上で菓子パンを食べたことを後悔した・・・。カップラーメンとオニギリを頂き、お腹が一杯になったところでいよいよ後半(とは言え残り94km)に入った。
下山道に入り、走ろうとしたが身体が重い。調子に乗って食べ過ぎたようだ。すぐ脇は崖になっていたこともあり、しばらくは歩くことにした。一本道なのだが、前にも後ろにもランナーの姿が見えないと、心細く、不安になってくる。迷いようのない道なのだが、心細いと自然と足が重くなってくる。しばらく下ると、ようやく一人のランナーが追いついてきた。Y田さんという武蔵ウルトラマラソンクラブのランナーで、スタッフにも知り合いが多いそうだ。雁坂峠は練習コースだそうだが、さすがに甲府から川越までの全コースは走った事はないらしい。しばらく一緒に走っていたが、途中の神社によりたいとの事で、Y田さんはコースを外れていき、また一人旅になってしまった。
一人になると、またペースが落ちた。一本道だと分かっていても、知らないコースを一人で走るのはどうしても心細く、不安になってくる。途中、目印のリボンが崖の下の方に付いている気があり、一瞬そちらがコースなのかと思ったりしたが、これは伐採する樹木の目印だったようだ。所々に標識があり、道を間違っていないことは確認できるので、大丈夫だ、と自分に言い聞かせても、すぐに不安になってしまう。ようやく山道の終わりが近いのか、自動車のエンジン音が聞こえてくると、ものすごくホッとした。この辺りで、先程のY田さんが再び追いついてきた。普通なら、一度コースアウトしたランナーに追いつかれるとあまり言い気持ちはしないのだが、この時はとても嬉しかった。このまま一緒に下山道を出て、一緒に次のCPまで走ることにした。
Y田さんは、ウルトラマラソンクラブに所属して入るが、ウルトラマラソンは今回が初めてだという。奥武蔵を走りたかったそうだが、毎年スタッフをしているので、走らせてもらえないとの事だった。
ようやく、長かった雁坂峠を越え、Y田さんと同時にCP4に到着!
F.CP4〜CP5<秩父市大滝大輪「増田屋」> 14.5km(+5km)
ここではスタッフから、この先は『真っ直ぐ行かないで左の旧道に行って下さい』と教えてもらった。まだお腹は減っていなかったので、うどんと梅干を頂き、CPを後にしようとする。トイレの場所を聞くと、『道路の左側に有料トイレみたいに綺麗な公衆トイレがありますよ』と教えてくれた。トイレは左か、と思いながらY田さんと一緒にCP4を後にした。Y田さんと一緒に、残り84kmを13時間以上あれば何とか時間内ゴールできますね、などと話しながらトイレに寄ったが、Y田さんは先程のCPに忘れ物をしたとの事で戻っていって、また一人になった。でも、もう一般道なので迷う事はないだろう・・・。
道路の左側のトイレを出ると、歩道が広い『右側』に渡って真っ直ぐ進んだ。トンネルがあったが、全く疑いもなく2.49kmの大滝トンネルを通り抜けた。そこから200mぐらい行くと、真っ直ぐと左にトンネルが見えた。あれれ?トンネルはくぐらないんじゃなかったかな?と不安になり、ここで初めて不安になった。あの左のトンネルが旧道か?と思いながら地図を見てみると、要注意箇所として『左側の旧道に入る(直進してトンネルに入らないこと)』と書いてあった。ガビーン!慌ててトンネルをもう1度くぐって戻った。まさか1度通ったトンネルをまた戻る事になるとは・・・。
ようやくトンネルを出たところで、せっかくだからと携帯で写真を撮っておいた。どうせなら、反対側でも証拠写真を撮っておけばよかったな・・・、と変なことで後悔した。
やっとこさっとこコースの旧道に入る事ができ、時計を見ると11時間を超えていた。約42分のロスタイムだった。この時はかなり焦った。予定外の時間を使ってしまい、体力も無駄に消費してしまった・・・。こんなことで制限時間内に完走できなくなったら悔やんでも悔やみきれないな・・・。
旧道は一般道とはいえ上り坂が続いていて、歩いているランナーが多かったが、私はとにかく走り続けていた。歩いていたランナーから「元気ありますね」と声を掛けられ、「ちょっと間違ってトンネルをくぐったもので・・・」と言うと、かなりビックリしていたようだ。
旧道を登りきって下っていると、静岡の友人から電話がかかってきた。甲府から川越に向かっているところ、と言うと私に気を使い電話を切ろうとしたが、私の方から気が紛れるからと、そのまましばらく話し続けた。電話をしている間はさすがにペースが落ちたが、その分、レース中に思わぬ友人と話を出来た事で、気分転換ができた。
63.5km地点の注意ポイントには、ワゴン車が1台停まっていて、ジュースをもらった。クーラーボックスの中にはビールも見えたが、これは勧められなかったし、まだ早いと思って諦めた。
国道140号線の途中に、道の駅があり何人かのランナーが寄っていくのが見えたので、ここがCP5か?と一瞬勘違いもしたが、地図を見るとCP5はまだ先。あと2kmぐらいのようだ。途中で歩道が無くなったりして、途切れない自動車が怖かったりもしたが、もうすぐCP5だと自分に言い聞かせ、とにかく走った。
2kmなら、信号待ち・体力消耗を計算に入れても20分あれば着くだろうと思っていたのだが、CP5は中々見えてこない。まさか見落としたか?とも思ったが、コースから外れる分かりにくい場所には必ずスタッフがいてくれるので、それはないだろう、思い直す。
途中に色々な店やら旅館やらの看板があり、CP5の店の名前を再確認すると、「増田屋」。この「増田屋」の看板を探したが、見当たらない。他の店の看板には、ここから店までの距離と方向が書いてあったので参考にしようと思ったのだが、仕方が無い。諦めてそのまま走り続けることにした。
もう自分のペース・距離感がよく分からず、自販機でコーラを買おうとすると、すぐ先にCP5が見えていた!コーラを買うのをやめ、ようやくCP5に到着!
まずはコーラを貰い、おかゆを食べていると、スタッフの方が小声で「ビールありますよ・・・」と言っているのを聞き逃さなかった!思わず「えー!?ビールあるの??」と大声で言ってしまった。スタッフの方の話では、5人ぐらいにビールを勧めたが、みんなに冷たく断られたとの事で、ビールを勧めるのに気が引けていたそうだ。
ビールを飲んで心機一転!いよいよ暗くなってきたので後ろに点滅ランプ、手には小さい懐中電灯を準備して、CP5を後にした。
G.CP5〜CP6<秩父市役所手前「熊木商店」> 18.5km
CP5を後にすると、一気に暗くなってきた。街灯はあるものの間隔が長く、結構暗い。小さいながらも、懐中電灯を持っておいてよかった。他のランナーは、しっかりしたヘッドランプをつけて走っている。自分の準備不足に反省した・・・。
空を見上げると、満月が綺麗に見えた。後で思ったことだが、満月を見られたことはもちろんだが、見えるということは満月からも私が見えるわけで、この月明かりのおかげでヘッドランプがなくても走ることができたように思う。この月明かりがなかったらと思うと、どうなっていたか・・・。
この区間では多くのランナーを抜いた。峠越えを含む80km以上を走って、みんな相当疲れているのだろう。私はまだまだ元気一杯。ペースはともかく、自販機でコーラを買ったり信号待ちをする時以外は走って進んだ。道を間違ったおかげで私より遅い(?)ランナーが前に行ってくれたので、一人抜けばまた一人、という感じで前に目標にできるランナーがいたので、夜間でも気持ちを切らさずに走れた。道を間違ったことは、決して無駄なことではなかった!
視界に入るランナーを全て抜き去ると、また一人旅。前方はかなり見渡せるが、もうランナーの姿は見えない。目標がなくなり、マイペースで走っていると、一人のランナーに抜かれた!背中に反射テープを付けていたランナーで、途中で歩いていたところを「ファイトー!」と私が励ましながら抜いたのだが、今度は私が励まされながら抜かれた。
気を取り直して走っていると、ようやく見覚えのある景色が見えてきた。西武秩父からの練習会の時に、いきなり道を間違って甲府方面に進んだのだが、そんな間違いも本番では役に立った!何が役に立つかわからないものだな・・・。
練習会で道を間違った時の事を思い出しながら、CP6を目指して走り続けた。もう少しだと思うと、自然と足が軽くなってくる。西武線の踏切を渡り、西武秩父駅を過ぎると、あと僅か!もう少しで秩父市役所だ、と思っていたらCP6に着いた。CP6は秩父市役所だと勘違いしていたが、少し手前の店だった。
ちょっと拍子抜けして、CP6に到着。
H.CP6〜CP7<飯能市西吾野「ロックガーデンカフェ」> 17.3km
ここでは、けんちんそばを頂いた。希望者の分を一つずつゆでるので、少々時間がかかるが、ここまで来たらそんなちょっとの時間は気にならない。コーラとオレンジジュースを飲みながら待ち、けんちんそばを食べてから、再スタート。CP6を出る時には15時間50分を経過。残り51kmを8時間弱。普通の状態なら何の問題もないのだが・・・。
ここからしばらくは、練習会で通ったコースが続く。あまり面白くない景色が続くのだが、夜だから気にならない。コースは緩い上り坂となっているが、前方にランナーが見えているので、ついつい追い付こうとスピードを上げてしまう。これはランナーの習性か?横瀬駅に入る道を通ると、奥武蔵練習会のことを思い出す。今年は色々なことがあったなー。
芦ヶ久保の駅のそばで、コースアウトして道の駅に寄り道。ここにはきれいなトイレがあるので、出すものは出しておこうと考えた。ついでに飲み物を補給。コーラばかりを飲んでいたので、違う炭酸飲料をと思い、レモンスカッシュを買った。寄り道をしたおかげで何人かのランナーに抜き返されたので、おかげでまた目標が増えた。目標を作るため、と考えれば休憩時間も悪くない!
何人かのランナーを抜いたが、中にはライトどころか反射板も着けていないランナーが何人かいた。何人かでまとまって走っていて、その内の一人しかライトを持っていないグループもあった・・・。
最後に二人組みのランナーを抜いて、いよいよ正丸トンネルに入る。このトンネルは、足元に反射灯が埋め込まれていたり、泥水があったりしていて走り辛いが、試走して状況が分かっていたので、あまり気にならない。走れないことはないのだが、滑って転んだら危ないので、ほとんど歩きながら進んだ。練習会で昼間にトンネルを通った時は早く抜けたいと思ったが、走り辛いもののトンネル内のライトは明るいので、このままトンネルの中を走りたいなー、などと考えていた。環境が違うとこうも考え方が違ってくるものなのか!?
トンネルを抜けると、もう前方にはランナーの姿が見えない。トンネルを振り返っても、先程抜いたランナーの姿はまだ見えてこない。結局、トンネルを抜けてからは一人のランナーも見ることなくCP7に到着した。
I.CP7〜CP8<日高市久保交差点手前> 14.3km
CP7に着いたが、ランナーは一人もいなかった。スタッフに聞いてみると、前のランナーは15分ぐらい前に出て行ったとの事。かなり暇だったようで、スタッフ全員から喜ばれた。色々なものを勧められたが、コーラやスポーツドリンクを飲みすぎて、もう胃が受け付けなくなっていた。色々と食べたかったが、おかゆだけを頂いた。ここを出る時は18時間23分。眠くはなかったが、体力はかなり消耗している。残り33.8kmで残り時間が5時間37分。絶対にゴールする気持ちではいたが、果たして制限時間内にゴールできるか、半信半疑だった。最終CP8で残り4時間あれば歩いてでもゴールできるかな?などと考えながらCP8を目指してスタート!
しばらく進むと、練習会の時は工事中だったコンビニがあったが、24時間営業ではなく閉まっていた。まあ期待していなかったが・・・。練習会の時に昼食を食べたホテルを横目に見ながら進み、吾野駅に差し掛かると、またもや奥武蔵練習会の事を思い出した。ここから顔振峠まで上ったことを思えば、このコースは大したことないな、と自分に言い聞かせながら走る。
東吾野駅にさしかかると、練習会を途中で断念したことを思い出す。だけど、本番は絶対に、何が何でもゴールしてやる!
いよいよ未知の道のりに入る。駅の近くを通る度に、地図を開いて進んだ距離を確認するが、あまり進んでいない事を知るとガッカリしてしまう。それでも、ついつい地図をみたくなってしまうのは、矛盾しているようだが少しずつでも進んでいるのを確認したかったからか?
もう体力は限界に近い。それでも、登山道以外は走って進むんだ!と自分に言い聞かせて、立ち止まってのストレッチはしても、絶対に歩いて進むことはしなかった。歩いたら終わりだ、とでもいうように・・・。
ようやく前方にランナーが見えてきた。このランナーは足を引きずって歩いていた。バテているランナーとは違うので、どう声をかけていいか分からなかったが、とりあえず「ファイトです!」とだけ声を掛けて抜いた。
それから少しして、ようやく最終CP8に到着した。
J.CP8〜ゴール!<川越市「健寿村」> 19.4km
CP8に着いて、スタッフからの第一声は「元気だね〜」。私は「・・・。」何と答えていいやら分からなかった。雑炊を食べながらスタッフと話をしたが、今までのランナーは、みんなボロボロだったとの事。時間内完走できるか不安だと話すと、「絶対に道を間違えないこと。それから、立ち止まらないで歩いてでも進めば時間内ゴールできるよ!」と励まされた。この言葉を聞いて、歩いては進まない、などというこだわりから解放される事ができた。CP8を出る時は既に日付変わっていて午前1時30分。制限時間の午前5時まで残り3時間30分。普通のレースならフルマラソンでも走れるが、今の状態で20km弱を走れるのか不安だったが、『歩いてでも制限時間内にゴールするんだ』と自分に言い聞かせてCP8を後にした。
後はもう、気力との戦いだった。レースなのに前にも後ろにもランナーの姿が見えない状態での、夜道のランニング。ランニングとは言っても、かなりの歩き混じりとなってしまった。イワン大佐がよくやっている『作戦的歩き』とは程遠い、足が上がらなくなっての歩き。それでも、絶対に『制限時間内にゴールする』という気持ちがあったから、走れなくなっても気持ちはゴールに向かうことができた。途中で道を間違え、余分に走ったことも後悔したくなかった。もし、制限時間内にゴールできなければ、一生後悔することになるだろう、でもゴールできれば、他のランナーが体験できなかった事を体験できていい記念になる、笑い話にもできる、と思いながら走った。入間川に差し掛かり、地図で確認すると137kmぐらい。残りは後4km!
線路越えの橋にかかると、ようやく一人のランナーが見えてきた。一緒に前夜祭をしたT辺さんのようにも見えたが、ゼッケンが見えなく、私と反対側の歩道を走っていたので声を掛けるのはやめておいた。
最後の注意ポイント、139.6km地点の連雀町交差点を曲がると、残りは1kmちょっと!もうゴールは近い・・・と思ったが、中々最後の神明町交差点が見えてこない。最後は右折するはずなのだが、道は左にカーブしている。不安になり地図を確認すると、左カーブを少し進めばゴールと分かり一安心!ゴールが近いと分かると、目には涙が浮かんできた。最後に二人組のランナーを追い抜くと、ようやく神明町の交差点に到着!スタッフが立っていて、少し進むとゴールだ。最後は走り抜けたかったが、写真を撮るので止められ、最後はガッツポーズで歩いてゴーーーーール!!!
K.ゴール後・・・
ゴール地点には、ドリンクがあり、とりあえずスポーツドリンクをもらった。よく見ると、ビールの空き缶がある!当然(?)ビールを貰おうとしたが、もう品切れとの事。うーん、残念・・・。
ストレッチをして、休息場所になっている大広間に入る。フーさんを探したが見当たらなかったので、とりあえずメールを送ってから風呂に入った。まずは水風呂に入ってアイシング・・・といきたかったが他のランナーで一杯だったので諦めて身体を洗って温まってから、最後にアイシング。ちょっと冷やしすぎたようだったが、このぐらいの方がいいのか?
大広間に戻ると、ちょうどフーさんからメールが届いた。周りを見渡すと、フーさんらしき後ろ姿を発見!フーさんに挨拶をしてから、ビールを求めて自販機を探しに行った。高かったが、とりあえず缶ビールを1本買い、これも待ちに待ったゴール後の一服!
すると、雁坂峠を下山中に出会ったY田さんに声を掛けられた。「早かったね〜」と言われたが、道を間違えたことを話したら驚いていた。この日は午後から用事があるとの事で、打ち上げには参加せずに帰るとの事だった。お互いに再開を願って別れた。
大広間に戻って眠ろうと横になったが、中々寝付けない。やはり相当に気持ちが高ぶっているのか?ようやく眠れたと思ったが、2時間ぐらいで目が覚めてしまった。眠ろうと思っても眠れなかったので、レースでできた豆をつぶしていると、一人のランナーに声を掛けられた。K関さんという方で、お年はなんと67歳!何でも50歳を越えて、フルのタイムが伸びなくなってきてからウルトラを走るようになり、最近ではレースはウルトラしか走っていないとの事だった・・・。素晴らしい!自分も60歳を過ぎてもウルトラを走っていたい!
この大広間で、11時から打ち上げパーティー。まだ時間があり、眠れそうもないので一服をしていると、明走会JAPANのK手さんから電話がかかってきた。久喜菖蒲公園での練習会中で、気になって電話をしてくれたそうだ。完走した事を告げると、喜んでくれた。続いてしばやんさんとも話し、フーさんと二人、無事にゴールできたことを報告した。
ようやく打ち上げが始まると、初めて会ったランナー方とも自然と話がはずむ。みんな一緒にレースを走った者同士、自然と仲間意識が生まれてくる。普通のレースでは味わえないことだ。話も弾んでいると、表彰式が始まった。続いて初完走者のスピーチ。私は道を間違った事を話したが、実行委員長が一番驚いていた顔をしていたようだ・・・。
ビールは飲み放題だったが、胃が疲れていてあまり飲めなかった。こちらは残念!まだ時間はあったが、みんなかなりのお疲れモード。送迎バスの時間までいてもいいとの事だったが、もう飲めないし、バスの時間まで待っていられないので帰る事にした。
帰りは駅まで歩こうかとも考えたが、日差しが強くて断念し、バスに乗ることにした。他のランナー達もほとんどがバス停に集まる中、連続完走のT辺さんが一人、歩いて駅に向かって行った。さすが!
本川越から西武新宿線に乗り、後は家に向かうだけ。そういえば、森林公園で練習会があった事を思い出したが、もうそんな気力はなかった。練習はともかく、顔ぐらいは出そうかと考えていたが、早く帰って眠りたかった・・・。
所沢でフーさんと別れると、電車はすいていたが眠らないように立っていた。乗り過ぎることなく無事に家に着くと、もう眠るだけ。泥のように眠りについた・・・。
かなりハードなレースだったが、色々な事を学んだ。峠越えでは自分がこんなに気が小さいのかと分かったし、今まで貫いてきた『舗装道では絶対に歩かない』という事はちっぽけなこだわりだと分かった。『ゴールする』ということが目的なのだから。
非常にタフなレースだったが、このレースはとても気にいった。永久ナンバーカードも貰った事だし、来年もまた、挑戦したいと思う。
次はいよいよシーズンオフ最終戦、日本山岳耐久レース(長谷川恒夫CUP)!